環境権と環境基本法

 憲法改正を視野にいれた憲法論議の中で、「環境権を憲法にもりこむべき」との意見は多い。

 自分もそのように考えていたし、大事なことだろうと思っていた。

 しかし本日の朝日新聞の「声」でこのへんの意見に接し、なるほどと思ったので記述しておこう。

 我が国には、「環境基本法」というものがあり、この法律は1993年11月月に施行されている。

 この環境基本法を忠実に遵守することで環境権を確実にできるという論調であるが、環境権を読み直し、環境基本法に目を通す中で、なるほどと思った。

 自分たちは知らな過ぎることがあまりに多い。周りはともかく、自分は全く勉強が行き届いていないふざけた奴だと痛感した。

 以下に環境権のまとめと、環境基本法の抜粋を掲載しておくので関心のある方はご覧あれ。

環境権という概念の生まれてきた経緯

 そもそも、環境権なる概念は、次のような経緯から、生まれてきた。

ミシガン州環境保護法(MEPA)

 1969年、アメリカ・ミシガン大学ロー・スクールのサックス教授(Joseph L.Sax)は、「天然資源保全および環境保護法」草案を起草し、それを元に、1970年4月1日、「ミシガン州環境保護法(MEPA)」が、下院に提出された。

 これは、提出日に由来し、「エイプリル・フールのジョーク」と呼ばれたほど、画期的な内容のものであった。

 すなわち、「大気・水・土地・その他の天然資源または、天然資源に関する公共信託に対する汚染・損傷・破壊について、市民・法人・団体等は、訴えることができる」(MEPA2条1項)というものである。

 ここでいう公共信託とは、公衆の共同財産である天然資源を、公衆が自由に利用できるよう、行政主体が公衆より信託され、管理・維持する義務をいう。

日本は1970年に東京宣言を採択

 日本においては、1970年3月、国際社会科学評議会外主催「公害国際会議」において、「環境を享受する権利と将来世代へ現在世代が残すべき自然資源をあずかる権利を、基本的人権の一種として、法体系の中に確立することを要請する」との東京宣言を採択し、環境権を初めて世に問うた。

 これをうけ、1970年9月、大阪弁護士会が、「何人も憲法25条に基づいて、良い環境を享受し、環境を汚すものを排除できる基本的な権利」として、環境権を提唱した。

 他の基本権の援用から、日本の環境権は、はじまった。

環境権は「環境共有の法理」を理論的根拠としている

 環境権は、「環境は、すべての人々のものであり、だれも、勝手にこれを破壊してはならない」という、「環境共有の法理」を、理論的根拠としている。

 そして、共有者の一人が、他の共有者よりの承諾をえることなく環境を独占的に支配・利用し、これを汚染することは、他の共有者の権利の侵害として、違法である、としている。

現行の日本国憲法においては環境権に関する条項がない

 現行の日本国憲法においては、環境権に関する条項がないため、日本国憲法の明記する人権のカタログに含まれていない「新しい人権」の一つとして、環境権を位置づけなければならない。

 そのため、すでに日本国憲法が明記している基本権のうち、その援用によって、環境保全を要求しうる権利の集合を、環境権としている。

 環境権として援用しうる基本権の代表例として、憲法13条の幸福追及権(人格権)と、憲法25条の生存権がある。

環境を守るために環境権の確立と環境基本法の熟知を

環境基本法の抜粋

 続いて以下は環境基本法の抜粋である。

第一条(目的)
この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

第二条(定義)
この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第十六条第一項を除き、以下同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。

第三条(環境の恵沢の享受と継承等)
環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。

第四条(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)
環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

第五条(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)
地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。

第六条(国の責務)
国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第七条(地方公共団体の責務)
地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第八条(事業者の責務)
事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3 前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4 前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

第九条(国民の責務)
国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する

第十条 (環境の日)
事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるため、環境の日を設ける。
2 環境の日は、六月五日とする。
3 国及び地方公共団体は、環境の日の趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならない。

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