京セラに学ぶ経営手法(アメーバ経営)

2014年8月16日

 京セラの「アメーバ経営」は有名だが、組織の活性化を考えていて、ふと思い出した。

 改めて調べてみると、なるほどという感じだ。

 備忘のつもりで、以下に残しておこう。

「見える経営」を実現するアメーバ経営

経営者の悩みを解消する経営手法とは

 「社員が増えたのはいいが、会社全体がはっきり見えているのかどうにも不安だ」というトップの方はいないだろうか。

 50~100人規模で成長が頭打ちになる企業が多いのは、トップに会社が見えなくなってしまうからだと言われるが、そうなのだろう。

 創業当初と違って、さまざまな社員がいろいろなビジネスを行う状況になると、とかくコミュニケーションが不足しがちになり、社内の活気も落ちてくる。

 こうした大企業病を克服することはそう簡単ではない。

 明確な基準によって、現場の動きを把握する仕組みづくりが必要になるのだ。

 そこで注目されるのが、京セラコミュニケーションシステムが提案する経営管理手法
 「アメーバ経営」だ。

 京セラが創業間もないころから取り入れた経営手法で、その成果は、グループ全体で売上高 1兆2000億円規模へと成長を遂げたことで実証済みといえるだろう。

 現京セラ名誉会長である稲盛和夫氏の書籍にも著されているが、アメーバ経営は「売上最大、経費最小という考えを突き詰めていくと経営はよくなる」という明快な考えに立ったものだ。

経営の実践の中で生まれ、実務に求められるアメーバ経営

 アメーバ経営とは、社内で行っているビジネスをそれぞれの部門で細分化し、全員参加で会社を小集団の集合体としてとらえる経営手法を指す。

 すべての小集団において時間当りという具体的な数値が、採算表として明らかにされる。

 そして、経営幹部や小集団のリーダーは経営者の分身として的確な指示や指導を行うことを求められる。

 各部門のリーダーは業績を上げるために具体的な指示を出し、社員の一人一人が創意工夫を行う。

 経営トップもより細分化された業績をタイムリーに把握し、具体策を講じることができる。

 「やらされる」という受身の姿勢ではなく、社員の参加意識を高めることが可能となる。

 このアメーバ経営を取り入れたことで、あたかも細胞分裂のように小集団が加速度的に増え、京セラは一大企業グループへと飛躍を遂げたのである。

 ここ数年は大企業本体がアメーバ経営を導入するケース、あるいは収益力向上、活性化を目的に、生産子会社などの関連会社が導入し、最終的に本体への導入を計画するケースも増えてきたという。

見える経営ができていない不安

 いま現在すべての企業に求められているのは、スピード経営だ。国境を越えた競争が熾烈化するなど、会社を取り巻く経営環境は厳しさを増す一方だからだ。

 タイムリーに情報をとらえて判断することが、いままで以上に求められているが、これが同時に経営者の危機感のもとともなっている。

 いま現在の会社の経営情報をどれだけ把握できているか、すなわち“見える経営”ができているか確信を持ちにくい立場に置かれているからだ。

 さらに、経営幹部や一般社員が現状を認識し、トップと同じような危機感を持っているかも確信が持てない。

 これらの共通する課題を抱えていたことが、アメーバ経営導入の動機付となったといえそうだ。

 社内のコミュニケーションに問題があり、部門間の連携が悪い企業は決して珍しくない。

 このような企業は全体のベクトルが一致しないため、目標に向かって全社一丸となるような雰囲気がない。

 さらに、会社が収益向上を目標として活動する中にあって、社員が生きがいを持って働いているか、経営者には確信が持てないのだ。

全員参加型の経営を実現する

 アメーバ経営は、経営手法の1つであると同時に、経営そのものでもある。末端の組織がビジネスの採算や顧客満足など、ビジネスの感覚を持って活動し、これらの小集団の集合体が会社となる。

 例えば、7人チームで係長がトップという小集団では、係長の役割は目標と方向性を明確にし、部下たちに具体的なアクションを指示することだ。

 もはや、会社に15年いたら課長になるという時代ではない。

 経営幹部や現場のリーダーは、いわば社長のミニチュアであり、各個人が役割を果たすことを求められているのだ。

全社が共通言語で会話できる

 トップから現場の社員まで全員が同じベクトルで動くことが、企業では理想の姿といえる。

 この点で、アメーバ経営には社内のコミュニケーションを促す効果もある。

 「時間当り採算」という、現場の努力を集計したものが、会社全体の時間当り採算となり、そして業績になる。全社共通の共通言語で現場の数値を把握できる点は画期的なものといえる。

 例を挙げると、トップが特定の部門の採算について、直接そのグループのリーダーに対して具体的な指示を出し、打つべき行動を検討することが可能となる。

 採算表という共通の物差しを使うからこそ、こうした対応が可能となるのだ。

 ポイントは、実際の行動が変わらないと数字は変わらないこと。

 必要に応じて、上司が部下への指導法や仕事への取り組み方をリーダーに対して具体的にアドバイスする。

 毎日仕事の成果が採算表という形で現場にフィードバックされ、グループの全員が自らが生み出した利益を知ることができる。

 300人の企業の場合、30ほどのグループに分かれる。これらがそれぞれ独立採算で成り立つ自立性を持ちながら、アメーバ同士の関係はライバルでもあり、パートナーでもある。

 このような仕事の進め方を通して、全社的な活性化が可能となるのだ。

 「理屈の世界では当たり前のことが、会社という組織ではなかなかうまくいかない」という。

 アメーバ経営によって利益の向上という目的に全員が参画する仕組みを作ることで、この課題が解決できるのだ。

 もちろん、部門の時間当りの採算を単純にほかのグループと比較することはできないが、その数字をどのように変化させていくか、がより重要となる。こうした視点で勤務評定が行われれば、社員の目標も明確になるのはいうまでもない。