ワークライフバランスは業務効率化と個人尊重の果実

2020年12月11日

 当年度(2011年度)は茨城県知事から委嘱をいただき、茨城県の「仕事と生活の調和推進員」として活動をしている。いわゆるワーク・ライフ・バランスの推進だ。

 自分は仕事と生活の調和推進には全く似合わない人間なのだが、ワークライフバランスを推進する立場となったので、とにかく勉強・研究を進めようと思い立ち行動を起こしてみた。

 昨日、平成23年6月28日(水)にワークライフバランスの進んだ企業視察として、「泰仁会・江隆会グループ 特別養護老人ホームやさと」様へ伺い、1時間を越えてヒアリングをさせていただいた。

 結論から言うと、大変参考になり、眼から鱗が落ちた思いでもあった。感動すら覚えたので、ご当人様の了解を得て、ブログに掲載させていただく。

 お伺いしたのは、施設長の高城様と事務課長の大塚様だった。

 ご両名様とも、ご多忙にもかかわらず快くご面談を引き受けていただき、本当にありがたい限りだった。

 まずもって、この場をお借りしまして御礼を申し上げます。ありがとうございました。

特別養護老人ホームやさと様の概要

 特別養護老人ホームやさと様は、名峰筑波山を望むことができる静かな田園風景の中にあり、恵まれた自然環境の中で、充実した生活支援を目指し、ご利用者の方々に満足頂けるような施設づくりを目標としていらっしゃる。

 自分も近くに、あのような自助努力の進んだ企業があったことに、とても驚いた。

 世の中は広く、自分の見聞はまだまだ微細であると反省することしきりである。

ワークライフバランスの鍵は業務の効率化

 さて、ヒアリング内容をかいつまんで掲載していこう。

 キーポイントとなるのは、業務の限りない効率化と集中力であり、仕事の成果無くしてワークライフバランスはありえないということだった。

 そしてトップダウンで実践できたことが成功の鍵だったということだった。

 ここが自分の目を開かせていただいたポイントだ。

 ワークライフバランスと言うと、育児休暇や介護休暇、そして有給の取得推進やノー残業デー実施などを思いつくわけだが、それはあくまで側面であり、仕事を効率化・スシテマティック化し、その果実として労働法が要求するような労働条件を達成できるというものであった。

 意識をしていなかったが、まさに「我が意を得たり!」という心境だった。

 当年度、茨城県からワークライフバランスの推進員として任命され、これから活動を展開していくわけだが、中小企業へのアドバイス活動についてちょっと自信が無かったのだが、光が差し込んできた。

特別養護老人ホームやさと様の取組みついて

 特別養護老人ホームやさと様の取組みは、ホームページでも確認できるが、簡単に列挙しておこう。

  • 出産時の特別有給休暇
  • 育児短時間勤務
  • 看護休暇(特別有給休暇)
  • 子供の学校行事などに参加する場合の子育て支援休暇(特別有給休暇)
  • 育児休業の男性の取得
  • モラールサーベイの定期実施
  • 職員とのタイムリーな面談実施
  • 人事考課制度の完全な運用

 特筆すべきは、絵に描いた餅で終わらせず、実効を上げることに、とことん拘っている姿勢だ。

 どだいルール化・書面化は簡単に出来るのだが、それを効果の上がるまで運営していくところに、本当の苦しみ・戦いがあると言ってよく、そこを施設長と事務課長がタッグを組んで、しっかりとチェック&フォローしているなと感じた。

 職員満足度に細心の注意を払っているのが素晴らしかった。

成果が出るまではとにかく時間がかかる

 また最近の効用・効果を確認させていただいたが、ようやく職員満足度もアップが目に見え始め、周囲からの評価も上がってきたことが実感されるようだが、ここまでの道のりは決して平坦ではなく、効果はじわりじわりとしか出てこないそうだ。

 そうなんだよな、と心から同調した。自分も生保所長時代を思い出していた。

 実行してすぐに効果が見えるようであれば、誰も苦労する必要が無く、結果が出るまでやり続けることこそが成功の要諦であると、お話を伺って改めて感じた。

 素晴らしい取組みだと心から感心した。

 そもそも今回ヒアリングしたかった大きな理由が、現場としての苦労や、成果が見えるまでの時間軸であったので、本当に参考になった。

 現在では、採用時に労働条件面を理解して入社する方も増え、確実に効果が上がっているのが感じられるという。

取り組んでこられた道のり

 取り組んでこられた流れを、簡単にまとめさせていただこう。

平成15年 看護士確保のために動き始める
平成15年 事業所内保育施設設置・運営等助成金にチャレンジ
平成17年 モラールサーベイに着手 以降毎年定例的に実施
  この期間、浸透せずプロジェクトメンバーだけがもがいている
平成19年 職場意識改善助成金に取組み風土改革を加速
平成20年 有給休暇の取得推進を計画的に実施

 推進や徹底のために、諸データを準備し、様々な会議体で発表して組織内浸透を図っていったとのことだった。

 こんな流れのようだが、次なる課題も実感しているという。

“本当のワークライフバランス”に向けて

 それは独身世代、子育て世代、子供独立世代、セカンドライフ準備世代など、それぞれ違うライフステージに立つ職員さんの嗜好が異なるので、それぞれのステージに応じた木目細やかなワークライフバランス施策の実現だという。

 同世代であっても、仕事とプライベートにおける価値観が違うので、ひと括りにするとかえって悪影響も予想され、各人を尊重した木目の細やかな運営をしていきたいと仰っていた。

 本当にそうだし、飽くなき向上心だと敬服した。

 最後に心に響いた一言をいただき、面談を締め括った。

 それは、「本当のライフワークバランスをどこまで実現できるかが本当の課題です。本当のライフワークバランスというものを上手に言葉に表せませんが。」ということだった。

 印象的だった。

経営者と業務効率化と職員満足度の追求を一緒に考えること

 自分も昨晩考えてみた。本当のライフワークバランスとは何だろうか?

 確かに上手に表現することは困難である。

 仕事と生活の限りない調和なのだが、それは追求すると職員一人ひとりに対しての大いなる尊重であり、そのために心の通い合う風土醸成こそが大切なのかも知れないと感じた。

 制度や明文化は、実際には簡単なことであり、成果に拘った業務遂行を前提に、ゆとりを創出するための業務効率化や業務改善の極大化こそが本来的意味なのではないかと、大いに感じ入った。

 そのように考えると、ワークライフバランスとは、経営者として取り組まなければいけない経営改善スパイラルであり、実は哲学そのものなのか、と頭を過ぎった次第だ。

 面談いただいた高城施設長にはとても丁重に対応いただき、感謝の限りである。

 大塚事務局長は、この経験を活かして社会保険労務士の受験を考えてみようかとのことだったので、ぜひチャレンジしてみて欲しいと思う。

 これから1年弱、ワークライフバランス推進員として、自分の指針に目処が付けられたことは大いなる収穫だった。

 自分のここでの役目は、
 経営者と業務効率化と職員満足度の追求を、とことん一緒に悩み考えることなのだろうか。

ワークライフバランスは青果にとことん拘った、業務効率化と個人尊重の果実なんだ

茨城県のフェイスブックページページご紹介(2013.8.26加筆)

 茨城県の商工労働部労働政策課では、「いばらきワークライフバランス倶楽部」ページを開始し、運用しています。

 茨城県内の事業所の取り組みの紹介や事業所間の情報交換の場を提供し、行政情報をはじめとする関連情報について、発信するそうです。「イイネ!」で参加してみてはいかがでしょう。