EQ(こころの知能指数)を高める

 Tさんから次のような話を聞きました。

「私の欠点は、すぐ部下に腹を立ててしまうことです。部下が結果を出せない時にも、腹が立ちます。部下が生意気な態度をとったりすると、カッとなって怒鳴りつけてしまいます。
 もっと寛大な上司になって、しっかり部下の話を聞けたらいいと思うのですが 、どうしても感情をぶつけてしまうのです。」

 Tさんは、「上から怒鳴りつけるやり方よりも、尊重心を持って接する方が、部下のモチベーションも上がるし、信頼関係も築ける 」と思っていながら、感情的になって部下を怒鳴ってしまう自分を変えることができないでいたようです。

 「感情のコントロール」は、EQの重要な要素の一つです。

EQ的なアプローチとして有効な2つの方法

 このような問題を解決するためのEQ的なアプローチとして、とても有効な方法が2つあります。

 1つは、Tさん自身の中にある根本的原因を解決していく方法。

 もう1つは、感情の健全な表現方法をスキルとして覚えて使っていく方法です。

 この両方からアプローチしていくとよいのですが、今回は前者の方法を紹介します。

アルバートエリス博士のABC理論

 ではまず、Tさん自身の中にある根本的原因を見ていきましょう。

 アルバートエリス博士のABC理論というのがあります。

 ABCとは、次のことを指します。

  • A=Affairs(Activating Event)=出来事
  • B=Belief(ビリーフ)=思い込み、信じ込み
  • C=Consequence=結果、結果として起きる感情や行動

 まず、出来事(A)として「部下が結果を出さない」とか「部下がTさんに反発的な態度をとる」という出来事があったとします。

 その結果(C)、Tさんが腹を立てたり、怒鳴りつけるという行動に出たとします。

 結果として起きた「感情(=腹立ち、怒り)」や「行動(=怒鳴る)」の原因は何だと思いますか?

感情や行動の本当の原因は自分の心の持ちよう

 Tさんは、「原因は、部下が結果を出さないことです」とか「部下が生意気な態度を取るから、私は腹が立つのです」と言うかもしれません。

 しかし、Tさんの感情や行動の本当の原因は、それらの出来事ではないのです。

 同じ出来事に出会っても、腹を立てない上司もいるのです。

 その出来事に対する、Tさんの「受けとめ方」「考え方」こそが、Tさんの感情や行動を作っているのです。

 そして、Tさんの「受けとめ方」「考え方」を作り出しているのが、Tさんのビリーフ(思い込み、信じ込み)なのです。

 出来事(A)を、自分のビリーフ(B)というフィルターを通して受けとめた結果、自分特有の感情や行動パターン(C)が起きるのです。

 これがABC理論です。

ビリーフについて考える

 わかりやすい例でビリーフについて考えてみましょう。

 ある主婦Aさんの例です。

 Aさんは、ある朝ゴミを出しに行きました。

 そこで、ご近所の奥さん(Bさん)に会ったので、「おはようございます」と挨拶をしました。

 ところが、そのBさんは、Aさんを無視して、不機嫌な顔で去っていったのです。

 Aさんは非常に不安になりました。「どうしよう! 私、嫌われてるんだ!」

 Aさんは、その日1日過剰な不安とともに過ごしました。

 そして翌朝、Aさんはゴミを出しに行けませんでした。

 「また、Bさんに会ったらどうしよう!」と考えると、行けなかったのです。

 ここで、Aさんの感情(過剰な不安)や行動(ゴミを出しに行けない)を作ったのは、近所の奥さん(Bさん)でもないし、その奥さんに無視されたという出来事でもないのです。

 その出来事に対する、Aさんの受けとめ方が作ったのです。

 そして、Aさんの受けとめ方の素になっているのが、Aさんのビリーフ(信じ込み)なのです。

 Aさんのビリーフを探った結果、一つのビリーフが見つかりました。

 Aさんは、「人に好かれねばならない」と信じていたのです。

非合理的ビリーフ

 このビリーフは、「人に嫌われるべきでない」と言い換える事もできます。

 「人に好かれねばならない(人に嫌われるべきでない)」と信じていたので、「人に無視される(人に嫌われる)」という現実に直面した時に、過剰に不安になってしまったたわけです。

 このように、Aさんの持っていた「人に好かれねばならない」というビリーフは、人生で起こりうるいろいろな現実に対応できないことが分かります。

 客観的に「人に好かれねばならない」という文章を読むと、その内容が現実的でないし、理にかなってないことも分かります。

 このような非現実的で非合理的な思い込み(ビリーフ)のことを、アルバート・エリスは「非合理的ビリーフ」と呼びました。

健全なビリーフ(合理的ビリーフ)

 逆に、健全なビリーフ(合理的ビリーフ)は、「人に好かれるにこしたことはない」という文章になります。

 どこか、曖昧さ(ファジーさ)があって、融通が利くのです。

 この合理的なビリーフを持っている人であれば、

 「人に好かれるにこしたことはないけど、あら残念、Bさんには嫌われたのかもしれないなー」と

 その場で健全にがっかりしたり、悲しい気持ちにはなりますが、1日じゅう過剰な不安に襲われることもないし、翌日ゴミを出しにいけなくもなりません。

 「べき」や「ねばならない」という信じ方(ビリーフ)こそが非合理的ビリーフで、人生での悩みや問題などを作り出します。

「~であるべき」で解釈は危険

 人生では思い通りにならない事や人にたくさん出会いますが、それに対して「~であるべき」で解釈しようとすると、パニックしたり、怒りを抑えきれなかったり、過剰に落ち込んだりする結果になってしまいます。

 以下に、「  」で挙げるのは、典型的な非合理的ビリーフです。

 そのビリーフを持っていると、その下(→)に書いてあるような結果になりやすいのです。

  • 「相手を不機嫌にするべきでない」
     →いつも相手の機嫌を優先して、自分が我慢をしてしまう。
      NOを言えない。断れない。(ノンアサーティブな生き方)
  • 「失敗すべきではない」
     →失敗を恐れて行動ができない。したがって、成功することもない。
  • 「私の配偶者は、私の生き方を理解するべきだ」
     →いつも配偶者に腹が立つ。なぜなら、実際の配偶者は、そうではないことが多いから。
  • 「子どもは親に対して従順であるべきだ」
     →いつも子どもに腹が立つ。子どもの反抗が許せない。
  • 「部下は上司の期待に応えねばならない」
     →自分の部下が期待に応えないときは腹が立つ。
      また、自分の上司に対しては、期待に応えようと必死になる。
      上司の期待に応えられなかった時は、過剰に落ち込む。

非合理的ビリーフを合理的なビリーフに書き換える

 これらの非合理的ビリーフを合理的なビリーフに書き換えることで、感情のコントロールが楽にできるようになり、より主体的な行動が取れるようになります。

 つまり、EQが格段に高まるのです。

EQを高めるために非合理的ビリーフを合理的なビリーフに書き換えることで感情のコントロールが楽にできる

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