石岡JC 2006年9月例会

2014年8月16日

総務渉外委員会担当の石岡JC例会が開催された。

 テーマは思いやりのある社会の実現に向けてということであり、事前に清掃活動を実施し、その清掃活動からの気付きをみなでまとめあう作業だった。

 まとめる手法はご存知「KJ法」。良く出来た例会だった。

 「KJ法」については、以下に参考のデータを書いておこう。

KJ法について

 日本で多くの人々が新しい知識を作り出す時に用いているものとしてKJ法がある。

 名前のKJは、提唱者の文化人類学者、川喜田二郎のイニシアルから来ており、元来は学問的な方法論であったが、1960年代から70年代の高度成長期に、ビジネスマンの間で広く用いられた経緯がある。

 KJ法は4つの作業段階から成る。

KJ法の4段階

第1段階

 第1段階では、考えなければならないテーマについて思いついた事をカードに書き出す。この時、 1つの事だけを1枚のカードに書かなければならない。

第2段階

 第2段階では、集まったカードを分類する。この時、分類作業にあたっては先入感を持たず、同じグループに入れたくなったカードごとにグループを形成するのがよい。

 グループが形成されたら、そのグループ全体を表わす一文を書いたラベルカードを作る。以後は、グループをこのラベルカードで代表させる。グループのグループを作り出してもよい。

第3段階

 第3段階では、グループ化されたカードを1枚の大きな紙の上に配置して図解を作成する。この時、近いと感じられたカード同志を近くに置く。

 そして、カードやグループの間の関係を特に示したい時には、それらの間に関係線を引く。関係線は隣同志の間でしか引いてはならない。

第4段階

 第4段階は、出来上ったカード配置の中から出発点のカードを1枚選び、隣のカード伝いに全てのカードに書かれた内容を、一筆書きのように書きつらねて行く。

 この作業で、カードに書かれた内容全体が文章で表現される。

第3段階が最も重要

 これらの段階の中で、第3段階が最も重要である。カードに書かれた内容は、隣に置かれたカードだけでなく、その他のカードとも関係を持つ場合が一般的である。

 この場合、隣に置けるカードの数は限られるので、重要な関係だけを選び出す作業が必要となる。

 遠くのカードの間に関係線を引くことによって関係を表わすことはできるが、隣接関係の表現程直接的でないので、図の明解性を損ねる。重要な関係を選ぶ作業を行なうことによって、問題の本質が認識されることが重要である。

 文章表現の場合、文の前後に2つの文しか置くことができないが、カード配置の場合、2次元空間での配置となるので、隣におけるカードの数が増える。それでも、せいぜい8枚しか置けない。

 関係を持つカードはもっと増える可能性があるが、文章表現の場合は、隣に置ける文の数が前後2つに限られるので、遠くの文との関係を言葉でつけざるを得ない。

 しかし、配置のように8つまで増やせれば、実用上十分な関係の表現力が得られたと言ってよい。

直感が大切

 第3段階の配置が得られた後、第4段階では配置上の全カードを一筆書きのように連ねることによって、全体を1次元で表現し直す。

 この作業がうまく行かない場合は、配置に問題があるので、うまく表現できるように、配置を変更する。

 以上の作業で重要なのは、直感である。配置もグループ化も、あらかじめ仮定した理論に従って行なうのではなく、元になる情報であるカードから直接感じられることに基づいて作業しなければならない。

図解化の本質的な意味

 カード同志の関係は、全体からみると局所的な関係であるが、配置によって、局所的な関係が全体の中で位置づけられることになる。

 即ち、配置作業によって、初めて全体像が明らかになるのである。

 部分の関係を積み上げて、全体の関係を構成するのが、図解化の本質的な意味である。

共同作業の中で議論が巻き起こる

 KJ法は、個人でも行なえるが、協同作業としても行なうことができる。

 その場合、カード配置などで行なわれた直感的な作業の結果について、議論がまき起こる。

 例えば、カードを左右どちらに配置するかといったことにすら、逆の配置がよいといった議論が始まることがある。

 幾何学的な配置は、意味が明確に定義されたものではなく、多様な解釈が可能であるが、一方で、間違った(と思われる)配置について、人間は極めて敏感である。

 意味が明確に定義されない幾何学的な配置が、実は大変に強力な表現力を持っているのである。

語の解釈のずれ認識から相互理解へ

 多くの場合、配置をめぐる議論の原因は、そのカードに書かれた語の意味の解釈がずれていることから生じる。

 こうした解釈のずれは、文章を聞いただけでは双方納得していても、配置になったとたんに意識されるものである。

 この結果始まる議論を通じて、語の解釈のずれが明らかになり、相互の理解が深まる。合意形成が重要な日本のビジネスマンがKJ法を愛用したのは、こうした理由からではないかと思われる。

KJ法運用上の留意点

 KJ法は、次のような使い方をすると効果的である。

  • 問題の正体がはっきりしない時。それを明確化する。
  • 問題はもやもやしたままでもよいから、とにかく紙切れに書き出していく。
  • 周辺情報を幅広く収集する。
  • カード化された情報は、バラバラなままディスプレイする。
  • バラバラなカード群の語りかけを素直な気持ちで聞き取っていく。
  • バラバラな情報群の中から、次第に紙切れたちが集まってきて、問題が形成され、構造化されるように思考する。
  • 構造化された問題から解決策を考える。
  • グループで取り組むことによって、衆知結集の効果や、チーム作りの効果を期待できる。

川喜田 二郎氏について

東京工業大学名誉教授、日本ネパール協会会長、川喜田研究所名誉顧問。
専門は、民族学、文化人類学、KJ法。

大阪市立大学、東京工業大学各教授を経て、昭和59年3月まで筑波大学教授。
のち日本ネパール協会会長、ヒマラヤ技術協力会代表理事などをつとめる。
また、カロリン群島、西北ネパーネ等の学術探検を行なう。
59年8月、ネパールの山村での生活改善運動の功績により、アジアのノーベル賞といわれているマグサイサイ賞受賞。
KJ法の創始者であり、日本能率協会の経営技術開発賞も受賞。